声優としての国際的な評価を得た後も、彼女の軸足が舞台からぶれることはなかった。その集大成のひとつが、ブロードウェイの名作ミュージカル『アナスタシア』の主演・アーニャ役である。
自らのルーツを求めて旅立つ力強いヒロイン像は、木下自身の表現者としての成長と見事にリンクしていた。伸びやかで透明感のあるハイトーンボイスは劇場の隅々まで響き渡り、観客の感情を揺さぶり尽くす。難関ナンバーを軽やかに歌いこなしながら、繊細な心情の揺らぎを緻密に紡ぐその姿は、名実ともに日本ミュージカル界の看板女優となった証左であった。