映画版黒ひげの重厚な威厳を創り上げたのは、ゴールデングローブ賞受賞歴を持つ英国の名優イアン・マクシェーン(Ian McShane)です。映画公開当時の海外メディア取材において、マクシェーンは「黒ひげは単なる怪物ではない。自らの死を極度に恐れ、そのためなら神をも欺こうとする哀しい俗物性を内包している」と語っています。その言葉通り、低く響くハスキーボイスと鋭い眼光によって、観客を圧倒する悪のカリスマを見事に体現しました。
日本語吹き替え版で黒ひげの声を担当したのは、名バイプレイヤーとして数多くの洋画吹き替えを手がけた実力派声優の勝部演之(かつべ のぶゆき)氏です。勝部氏の深みのある低音ボイスは、イアン・マクシェーンの原音の迫力を損なうことなく、冷酷非情な首領としての重圧感を完璧に再現しています。
また、黒ひげの娘アンジェリカ役を務めた本名陽子氏との緊迫した掛け合いも見逃せません。父親の冷酷さに傷つきながらも慕い続ける娘と、それを利用し尽くそうとする父親の冷淡なトーンの対比は、吹き替え版ならではのドラマツルギーをより一層際立たせています。