2000年代に公開された周防正行監督の映画『それでもボクはやってない』は、冤罪被害のリスクと刑事司法の限界を浮き彫りにし、社会全体に大きな衝撃を与えた。当時は「疑わしきは処罰せず」の原則と被害者の証言の重みの間で揺れる法廷の姿が大きな議論を呼んだが、あれから時が流れた現在も問題の本質はより複雑な形で残されている。
加害行為を絶対に許さない確固たる捜査姿勢と、万が一の誤認逮捕を防ぐ慎重な事実確認。この相反する要請の狭間で、警察や司法現場は今なお難解な舵取りを迫られている。法制度の整備が進む一方で、冤罪への恐怖から救護行動を躊躇してしまう乗客が存在することもまた、現場の救済を遅らせる一因となっている。