「新幹線を止めると賠償金は1億円を超える」という言説は、都市伝説のように長年語り継がれてきました。結論から述べると、新幹線人身事故の損害賠償であっても、個人に対して1億円を超える請求が確定・執行される例は極めて稀です。
都市部の在来線における鉄道人身事故の賠償金相場は、運行停止の時間や時間帯にもよりますが、おおむね200万円から500万円前後、影響が大きなターミナル駅のラッシュ時でも1,000万円前後にとどまることが一般的です。これに対し、長距離を高密度で運行する新幹線は影響額が跳ね上がりますが、それでも実際の請求額は1,000万〜3,000万円程度、最大級の混乱が生じた場合でも数千万円台で算出されるケースが主流となっています。
では、なぜ「億単位」という数字が独り歩きするのでしょうか。その背景には、鉄道会社が被った「理論上の総損失額」と、法的に「事故を起こした個人に請求可能な損害額」の混同があります。鉄道会社は事故発生時、過失割合や個人の弁済能力を無視して天文学的な金額を一方的に請求するわけではありません。