なぜこの空間は、流行の移り変わりが激しい新大久保で長期にわたり支持され続けているのでしょうか。その最大の理由は、「視覚的な非日常性」と「直感的な没入感」が見事に融合している点にあります。店内に一歩足を踏み入れると、テーブルや椅子、カーテンのドレープ、壁のレンガ模様に至るまで、エッジ部分が黒いペンで手描きされたかのような特殊な陰影処理で統一されています。
人間は普段、光の反射や立体的な陰影を手がかりに物体の奥行きを認知しています。しかしこの空間では、白地に黒いアウトラインという漫画のコマ割りやスケッチ画の技法が現実の立体物に施されているため、脳の認知に心地よいバグが生じます。訪れた人々が撮影した写真を見返すと、人物だけがフルカラーの現実世界から切り抜かれて絵の中に飛び込んだような不思議なコントラストが生まれます。2Dカフェのモノトーンによる写真映えは、フィルター加工に頼ることなく肉眼とスマートフォンのレンズ越しに完成された世界観を提示してくれるのです。
さらに、ただ空間が珍しいだけにとどまらず、提供されるスイーツやドリンクが鮮やかなカラーアクセントとして機能するよう計算されています。真っ白なキャンバスの上に置かれたイチゴの赤やマンゴーの黄色、抹茶の緑が鮮明に際立ち、運ばれてきた瞬間からテーブルの上がひとつの完成されたアート作品へと昇華します。