ネット裏に陣取るプロ注目スカウトたちの視線が、一人の投手に釘付けになった。しなやかなフォームから放たれる快速球がミットを叩くたび、乾いた捕球音がスタンドに響き渡る。球速計の数字以上に打者の手元で伸びる球質。彼が投じる一球一球に、プロ関係者は無言でスピードガンとメモを往復させていた。
「冬場に徹底して体幹と下半身を作り直した。フォームのブレが消え、終盤でも指先に力が乗るようになった」と本人は冷静に振り返る。華々しい数字の裏にあるのは、スポットライトの当たらない日々で積み上げた地道な試行錯誤だ。己の限界を押し広げた者だけが、土壇場のマウンドで涼しい顔をして腕を振ることができる。