西城秀樹の真価は、アップテンポなシングルヒット曲の裏側に存在する、極上のバラードやアルバム収録のAOR(Adult Oriented Rock)ナンバーにこそ宿っています。当時のトップミュージシャンたちが彼の卓越した歌唱力を前提に書き下ろした楽曲群は、歌謡曲というジャンルを軽々と超越し、現代のシティポップブームの文脈でも熱烈な支持を集めています。
バラードの名曲として筆頭に挙げられるのが、1979年の「勇気があれば」(作詞:山川啓介、作曲:筒美京平)です。過度な装飾を排し、語りかけるような導入からクライマックスへと高まる構成は、西城秀樹の豊かな中低音の魅力を際立たせています。また、1978年の「ブーツをぬいで朝食を」(作詞:阿久悠、作曲:大野克夫)では、洗練された大人の恋愛風景を抑制の利いたスタイリッシュなボーカルで表現し、それまでのワイルドなイメージから一歩進んだ都会的な男の色香を提示しました。
さらに、ファンや音楽評論家の間で「隠れた名盤」として語り継がれるアルバム群には、芳野藤丸、角松敏生、織田哲郎ら実力派クリエイターが多数参加しています。
特に1980年代中盤にリリースされたアルバム『TWILIGHT MADE …HIDEKI』や『FROM TOKYO』などは、ブラコン(ブラック・コンテンポラリー)やアーバン・ファンクを大胆に取り入れた意欲作です。シングル表題曲では見せなかった繊細なファルセットやタメの効いたグルーヴ感は、単なる「昭和のアイドル」というパブリックイメージを鮮やかに覆してくれます。