硬膜外麻酔の導入によって下半身の知覚と運動神経が遮断されると、自然な陣痛の波が弱まる「微弱陣痛」が起こりやすくなる。結果として陣痛促進剤の使用頻度が高まり、分娩にかかる全体の所要時間が延びる傾向は統計的にも明白だ。
陣痛が遠のき、さらに骨盤底筋の感覚が鈍ることで「いきむ」タイミングを掴みにくくなると、胎児の下降が停止してしまう。こうした局面では、赤ちゃんの頭部にカップや金属器具を装着して引き出す吸引分娩・鉗子分娩への移行が不可避となる。日本産婦人科医会の調査でも、自然分娩と比較して器械分娩の発生割合が上昇することは明確な事実として確認されている。
器械分娩は胎児を迅速に救出するための重要な手段である一方、会陰部の深い裂傷(会陰裂傷Ⅲ度・Ⅳ度)や頸管裂傷のリスクを引き上げ、産後の会陰痛や排便障害が長引く要因にもなる。痛みを緩和した結果として、産後の局所回復に時間を要するという逆説的な負担が生じる可能性を覚悟しなければならない。