彼が主戦場とするのは、日本の老舗お笑いプロレス団体「西口プロレス」だ。ここでは技術や強さではなく、「いかに客席を笑わせるか」がすべての価値基準となる。リング上で展開されるのは、過激な肉体のぶつかり合いではなく、緻密に計算された「間」と「顔芸」の応酬だ。
中邑珍輔の凄みは、本家のモーションをただ真似るだけでなく、観客の視線を集めるタイミングを完璧に把握している点にある。技のクオリティは本家とは程遠い。だが、ロープにだらりと寄りかかるあの「たぎる」ポーズ一つで、会場全体の空気を支配してしまう力は、本物のプロレスラーのそれと何ら変わらない。