お弁当の常識として「冷ましてから詰める」ことが推奨されるが、ここに落とし穴がある。粗熱を取るために常温で放置する時間が長ければ長いほど、菌が付着・増殖するリスクは高まる。前述の黄色ブドウ球菌は、30℃で3時間あれば毒素を産生する。つまり「冷ます」工程そのものが、時間をかけすぎると危険行為に変わる。
正しくは、加熱直後に金属トレーや保冷剤を使って急速に冷まし、菌が増殖しやすい20~50℃の温度帯(危険温度帯)をできるだけ短時間で通過させることだ。目安は30分以内。夏場は扇風機や冷風を当て、冬場でも油断せずに冷蔵庫へ入れるタイミングを早めたい。
もう一つの誤解は「お弁当用の鶏肉はしっかり火を通せば大丈夫」という過信だ。確かに加熱は重要だが、加熱後に菌が付着すれば元も子もない。調理者の手指、菜箸、まな板、弁当箱の内側。これらが清潔でなければ、せっかくの加熱が台無しになる。特に鶏肉を切った後のまな板と包丁は、他の食材に触れる前に熱湯や塩素系漂白剤で消毒するのが望ましい。
また、「冷凍すれば菌は死ぬ」という認識も誤りである。冷凍は菌を増殖させないだけで、死滅させるわけではない。解凍すれば再び増殖を始める。下味冷凍はあくまで味と食感のための手法であり、安全性の担保には再加熱が不可欠だ。