あの日の緑山スタジオには、独特の緊張感が漂っていた。巨大な鋼鉄の魔城が夕闇に浮かび上がる中、競技エリアに立った挑戦者の目には一切の迷いがなかった。水面に突き出された極細の足場、指先ほどの引っ掛かりしかない壁面。わずか数ミリの誤差が水没を意味する極限状態の中、彼女の一動作ごとに会場全体が息を呑んだ。
これまで数々の実力者を水中に沈めてきた難関エリア。制限時間のカウントダウンが刻一刻と迫る中、しなやかな跳躍と驚異的な保持力で障害物を次々と攻略していく。フィニッシュボタンへ手が届き、ホーンが鳴り響いた瞬間、実況ブースも観客席も狂喜乱舞した。SASUKEの歴史において、女性の手によってこの難所が攻略された瞬間は、まさに新たな神話の誕生と言っても過言ではない。