メンタルヘルスのコミュニティや知恵袋、SNSの当事者コミュニティを定点観測すると、「自分が嫌悪の対象になる瞬間」に関して共通するリアルな証言が数多く見受けられます。
大手企業の管理職を務めていた30代男性の手記には、「些細な書類のミスをした瞬間、頭の中で『お前は同僚の足を引っ張るだけの寄生虫だ』という声が響き渡り、トイレに駆け込んで吐き気に襲われた。当時は自分の甘えだと思っていたが、受診したところ中等度のうつ病と診断された」と記されています。また、育児と仕事の両立に悩んでいた20代女性は、「子どもの泣き声を聞くたびに『私のような人間が母親で申し訳ない』と涙が止まらなくなった」と当時の逼迫した心情を吐露しています。
ここで知っておくべきは、世間一般で言われがちな「ポジティブシンキングを持てば治る」「気合で乗り越えられる」という言説の危うさです。脳の神経回路が過負荷状態にある当事者に対して「前向きになろう」と促すことは、骨折しているランナーに「気合で走れ」と命じるのと何ら変わりません。無理にプラス思考を押し付ける行為は、かえって「前向きになれない自分」を再生産し、自責の念を深める結果を招きます。