暴走するトロッコの進路を変えるか否か。この単純明快でありながら残忍な構造を持つトロッコ問題には、時代や文脈を変えた数多くのバリエーションが存在する。共通しているのは、いずれのケースも「命の数を天秤にかける計算」と「個人の人権や道徳的直感」が激しく衝突する点だ。
橋の上から巨漢の男を突き落としてトロッコを止める「歩道橋の男問題」をはじめ、医療現場や緊急事態を模したシナリオまで様々だが、根本にあるのは「功利主義」対「義務論」の対立である。全体の利益を最大化すべきか、それとも特定の行為そのものが持つ悪を拒絶すべきか。この相容れないふたつの価値観がせめぎ合う場所に、あらゆる倫理ジレンマの原点が位置している。