湯船に身体を沈めると、肌にまとわりつくような独特のとろみがある。泉質は湯守が毎日その日の気温や湿度に合わせて微調整しており、一切の妥協がない。加水や温度管理の難しさは素人目には見えないが、肌を滑る湯ざわりの軽やかさがその仕事の確かさを物語っている。
「お湯は生き物ですからね。機嫌を損ねないように付き合っているだけですよ」。裏手のボイラー室近くで作業着を着たベテランスタッフが、照れくさそうに笑いながらそう呟いた。自然の恵みと、それを守り続ける人間の手仕事。そのふたつが奇跡的に噛み合っているからこそ、この湯には芯から身体を解きほぐす確かな説得力がある。