タトゥーと和彫りは、皮膚の下に色素を定着させるという物理的原理こそ同じですが、その構造と思想は根本から異なります。最大の違いは、「背景(額)を含めた全体構図」を前提とするか、「単体デザインの配置」を前提とするかにあります。
日本の和彫りは、江戸時代後期の町人文化や浮世絵、歌舞伎、火消しの粋(いき)から発展した身体装飾です。身体の曲線をキャンバスに見立て、主柄(龍や虎など)の周りに「雲・波・岩・桜」といった自然要素を「額(がく)」として敷き詰めるのが特徴です。一方、洋彫り(タトゥー)はポリネシア諸島や西洋の船乗り文化、アメリカのオールドスクールなどを源流とし、ワンポイントのレタリングやモチーフをワンショットで完結させる傾向が強く見られます。
また、彫りの技法においても、和彫りでは伝統的な「手彫り(針を束ねた棒を手動で突き入れる技法)」を継承する職人が今なお存在します。現在では輪郭である「筋彫り(すじぼり)」をマシンで行い、陰影や色彩の「ボカシ」を手彫りで行うハイブリッド手法も広く採用されています。