ジビエ愛好家や狩猟者の間で、タヌキ肉の評価は真っ二つに分かれます。「強い獣臭と独特の脂っこさで箸が進まない」という声がある一方、「冬場の脂が乗った個体を濃い味噌で煮込むと滋味深い」と評価する通も存在します。この極端な評価の背景には、タヌキの食性と個体差があります。
タヌキは雑食性で、昆虫、カエル、果実、死肉、さらには人間の生活圏の残飯まで口にします。そのため、何を食べて育ったかによって肉質と脂の匂いが劇的に変化するのが特徴です。特に皮下脂肪に特有の草木臭や泥臭さが蓄積しやすく、適切な処置を施さない肉は強烈な臭気を放ちます。
ここで重要なのが、よく混同されるアナグマ(ムジナ)とタヌキの味の違いです。アナグマはタヌキと外見が似ているもののイタチ科に属し、主にミミズや果実、ナッツ類を好みます。アナグマの肉は「ジビエ界最高峰の美味」と称され、脂身はフルーティーで甘みがあり、臭みがほとんどありません。古来、猟師の間で「タヌキは不味いが、同じムジナと呼ばれるアナグマは極上」と区別されてきた事実が、タヌキ肉への誤解と混乱を生む一因となっています。