では、地理学・海洋学的に定義された「太平洋と大西洋の本当の境目」はどこにあり、どのような環境なのでしょうか。国際水路機関(IHO)の公式規定や国際条約において、両大洋の境界線は明確に定められています。
南半球における太平洋と大西洋の境界は、南アメリカ大陸の最南端、チリ領ティエラ・デル・フエゴ諸島のホーン岬(南緯55度58分)を通過する「西経67度16分の経線」と定義されています。ここから南極大陸のパーマー半島へと至る約800〜1000kmの海域が、世界で最も航海の難所として知られるドレーク海峡です。
このドレーク海峡では、地球上で唯一、陸地に遮られることなく地球を一周する巨大な海流「南極環流(西風漂流)」が西から東へと猛烈な勢いで流れています。遮るもののない強風(吠える40度、狂う50度、絶叫する60度)によって常に10メートルを超える大波が渦巻いており、太平洋の水と大西洋の水は境界線で分断されるどころか、世界最強クラスのエネルギーで激しく攪拌・混合され続けています。現場を航行する船乗りたちの証言でも「ホーン岬周辺で海の色が二つに分かれているような光景は存在せず、一面の荒れ狂う濃紺の海が広がるのみ」と語られています。