この重厚な社会的テーマに焦点を当て、世界的な議論を巻き起こしたのが、是枝裕和監督による映画『ベイビー・ブローカー』だ。韓国のベイビーボックス(赤ちゃんポスト)を舞台に描かれた本作は、預けられた赤ん坊を横流しして金銭を得ようとする男たちと、子どもを捨てざるを得なかった母親、そして彼らを追う警察官たちの複雑な人間模様を繊細に描き出した。
主演を務めたソン・ガンホが見せた静かで熱い演技は世界中で高く評価され、第75回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した。映画は単なる善悪の判断を拒み、「生まれてきた命をどう包み込むか」という根本的な問いを提示する。登場人物たちの葛藤を通して、孤立した親を追い詰める社会の視線や制度の限界という切実な内情が浮かび上がってくる。