一般的な新幹線のグランクラスや特急の個室料金から見れば、1人100万円という額面は非現実的な数字に映るかもしれません。しかし、JR東日本が発足30周年を機に世に送り出したJR東日本 クルーズトレインのコスト構造を分解すると、その価格設定が極めて論理的な帰結であることが分かります。
第1の理由は、徹底したキャパシティの圧縮と人件費比率です。通常の新幹線であれば1編成で数百人から1,000人近くを運ぶところ、四季島は10両という長大な編成にわずか34名しか乗せません。その34名のゲストに対し、車掌、トレインクルー、料理人、バーテンダーなど総勢20名前後の専門スタッフが常時アテンドします。このゲスト・スタッフ比率は、世界のウルトララグジュアリーホテル(アマンやリッツ・カールトン・リザーブなど)と同等、あるいはそれ以上の手厚さです。
第2に、四季島 食事 メニュー 評判に直結する圧倒的なガストロノミー体験です。車内のダイニング「DINING しきしま」で供される料理は、日本人として初めてミシュランの星を獲得した中村勝宏氏がプロデュースし、現地の著名シェフが停車駅ごとに乗り込んで腕を振るいます。日本海沿岸の朝獲れ鮮魚、奥羽山脈の特選和牛、採れたての山菜や地野菜など、走る厨房だからこそ実現できる「その土地、その瞬間の味」が、銀座やパリのグランメゾンと同格のサービスで振る舞われます。ワインや日本酒、バーラウンジでの銘酒も、ヴィンテージボトルを除き原則としてすべてツアー代金に含まれる「オールインクルーシブ」です。
第3に、工業デザイナー・奥山清行氏が手掛けた空間美術と、東日本の伝統工芸の粋を集めた建築的価値です。車内には和紙、漆塗り、南部鉄器、津軽塗などの職人技が随所に散りばめられ、先頭・最後尾の展望車「VIEW PLAZA」からは天井まで広がるガラス窓を通じて四季の移ろいを独占できます。移動手段としての鉄道ではなく、「走る美術館・最高峰の迎賓館」を貸し切る体験こそが、高額料金の核心です。