世間を最も驚かせたのは、通訳という密接な立場を悪用して敢行された約1700万ドル(約26億円超)にも及ぶ破格の不正送金の手口である。水原一平氏はなぜ違法賭博に手を染めたのか。その根本的な動機には、当初の軽率な好奇心と、一度足を踏み入れたら逃れられないギャンブル依存症の負の螺旋が存在していた。カリフォルニア州連邦地方裁判所に提出された訴追資料によれば、彼は大谷翔平選手の銀行口座の設定を無断で変更し、自身の携帯電話や連絡先へ通知が届くよう工作を行っていた。
大谷選手本人が英語に不慣れであること、そして財務管理を全面的に信頼していたという盲点を突いた形だ。銀行からの確認電話に対しても、水原氏は自らを「大谷翔平」と偽り、巧妙な語り口で同行の担当者を欺き続けた。動機としては単なる負け分の穴埋めにとどまらず、肥大化した自己の優越感や、違法ブックメーカーとの繋がりによって得られる異常な全能感に支配されていた側面が強い。2026年現在の視点から改めて検証しても、その手口の周到さと裏切りの深さは惨澹たるものがある。