歌手として頂点を極めていた彼女の才能を、女優として開花させた立役者が名プロデューサー・石井ふく子氏だった。TBSテレビが制作したホームドラマ『ありがとう』への抜擢は、日本のテレビ史に残る金字塔を打ち立てることになる。
民放ドラマ史上最高視聴率56.3%を叩き出した同作で、水前寺は主人公の看護師や警察官役を熱演。山岡久乃をはじめとする名優たちとの掛け合いの中で見せた飾らない人間味は、日本中のお茶の間を虜にした。石井ふく子氏との厚い信頼関係は、水前寺にとって芸能生活における大きな財産となり、人間としての軸を形成する貴重な糧となった。
テレビ画面越しに家族の温もりを届け続けた経験が、皮肉にも後年の私生活における葛藤と対比され、彼女の孤独をより深いものにしていたのかもしれない。