スリーピースバンドというミニマムな編成において、ドラムの役割は極めて重大です。ギターのバッキングが抜けてソロパートに入った際、ベースとともに楽曲のコード感とリズムの立体感を担保し続けなければ、アンサンブル全体が容易に瓦解してしまうからです。吉川美冴貴のドラミングは、そうした構造的リスクを完全に払拭する高い演奏技術と音楽的知性に裏打ちされています。
『リズム&ドラム・マガジン』などの専門メディアでも度々フォーカスされている彼女の強みは、以下の3点に集約されます。
- 精密無比なタイム感とタイトなスネア:跳ねるようなポップチューンから重厚なミドルバラードまで、ブレのない強固なクリック感を提供。
- 変拍子やキメを鮮やかに処理する手数:宮崎朝子が紡ぐ変則的なリフに対し、ゴーストノートや巧みなシンバルワークで細やかなアクセントを付加。
- 小柄な体格を感じさせない強烈なダイナミクス:無駄な力みを排除した合理的なフォームから繰り出される、芯のあるオープンリムショット。
愛用機材に関しては、堅牢な鳴りと明瞭なアタックに定評があるdw(ドラム・ワークショップ)のドラムセットをメインに据え、シンバルには繊細なサステインとレスポンスを兼ね備えたZildjian(ジルジャン)を採用。スティックは手首のスナップを最大限に活かせるカスタムバランスのモデルをセレクトしています。過度なエフェクトに頼らず、生音の輪郭を際立たせるセッティングへのこだわりが、SHISHAMOのソリッドなバンドサウンドを決定づけています。