辻仁成が紡ぎ出した小説『サヨナライツカ』は、愛の絶対性と運命の残酷さを描き切り、映画化とともにアジア全域で大きな反響を呼んだ。父親が紡ぎ出すドラマティックな言葉の世界と、ロッカーとしてステージで叫ぶエネルギー。十斗氏は物心ついた頃から、そうした強烈な表現の渦に身近で触れ続けてきた。
だが、彼は父親の威光を借りて表舞台に立つ道は選ばなかった。自らの表現手段を模索しながらも、地に足の着いた生活者としてのリアリズムを失わない姿勢には、多感な時期を異文化の波にもまれながら生き抜いた青年ならではの芯の強さがうかがえる。