劇中において、アシタカとサンは互いに惹かれ合いながらも、最終的に「共に暮らす」というハッピーエンドを選ばない。サンは「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない」と語り、アシタカは「それでもいい。共に生きよう」と答える。
この選択こそが、従来のハリウッド型エンターテインメントとは一線を画す点だ。エボシ御前が率いるタタラ場の人々も、森を守ろうとするシシ神や犬神たちも、それぞれの正義と生きるための切実な理由を持っている。アシタカはどちらか一方を悪と決めつけることなく、「曇りなき眼で見定め」ようと苦悶する。妥協のない対立の果てに提示される「共生」とは、安易な融和ではなく、互いの違いを抱えたまま別々の場所で生き抜くという、過酷でリアルな自立の姿なのだ。