この場所で開催されるライブの多くは、生音(アコースティック)でのパフォーマンスにこだわる。サックスのキーがカチリと鳴る金属音、ギターの弦に指が擦れるかすかな摩擦音、そして奏者の吐息。マイクで増幅されない音波は、空間の壁に跳ね返り、そのまま聴き手の身体を直撃する。
観客は単なる受動的なリスナーにとどまらない。わずかな身じろぎや緊張感が演奏者のインスピレーションに影響を与え、その場の空気そのものが音を構築していく。円環状に広がっていく音のコミュニケーションは、演者と客という境界線を軽々と踏み越え、ひとつの夜を唯一無二のドキュメントへと変貌させていく。