近年の渋谷は、次々と誕生する最先端の複合施設やスマートシティ化によって、世界で最も未来的な都市空間へと変貌を遂げた。ガラス張りのビルが立ち並ぶ整然とした街並みの中で、夕刻になると芳しい鶏油の香りを漂わせる一角がある。それこそが、昭和22年(1947年)の創業以来、同じ場所で変わらぬ暖簾を掲げ続ける鳥竹の店舗だ。
ガラガラと引き戸を開ければ、威勢の良い掛け声とジョッキがぶつかり合う音が耳を打つ。1階から地下、さらには上階に至るまで、客席は仕事帰りの会社員や長年の常連客で埋め尽くされている。デジタル化が進み、個人の空間が遮断されがちな現代において、この生々しい人間の体温を感じさせる空間こそが、人々に求めてやまない安らぎを与えているのかもしれない。