色川武大という作家の特異性は、ピカレスクの金字塔である『麻雀放浪記』を生み出した阿佐田哲也としての顔と、純文学作家としての顔を見事に使い分けた点にある。ギャンブル小説というジャンルを一流のエンターテインメントへと引き上げた業績は極めて大きい。
一方で、彼は後進の作家たちに計り知れない影響を与えた。伊集院静もまた、その影響を色濃く受けながら自らの文学世界を構築し、後に直木三十五賞を受賞することとなる。エンターテインメントと純文学の垣根を取り払い、どちらの領域でも最高峰の作品を結実させた二人の軌跡は、文芸のあり方を根底から揺さぶるものであった。