なぜ日比野設計の「幼児の城」は、国内外の園長や教育関係者から指名され続けるのか。その核心は、徹底した「逆張り」とも言える設計思想にあります。
昭和から平成にかけての日本の幼稚園・保育園建築は、「壁はパステルカラー」「キャラクターのイラスト」「角をすべて丸めたクッション材」という、いわば大人が都合よく管理するための安全設計が主流でした。しかし日比大介氏が提唱したのは、「子どもを甘やかさない、本物の体験を与える空間」です。
代表作の一つである小規模保育園や認定こども園の事例では、あえて園庭や室内に起伏のあるスロープや段差を設け、走ると自然に足腰が鍛えられる回遊動線が組み込まれています。また、雨の日には雨水が中庭の水たまりに流れ込み、子どもたちが泥遊びを楽しめる構造や、厨房をガラス張りにして調理の匂いや包丁の音をダイレクトに五感へ届ける設計など、知的好奇心を刺激する仕掛けが随所に散りばめられています。
これらの一連の建築作品は、国際的にも極めて高い評価を受けています。世界最高峰の建築賞である「World Architecture Festival(WAF)」の部門最優秀賞をはじめ、ドイツの「iF Design Award」「Red Dot Design Award」、そして日本の「キッズデザイン賞最優秀賞(内閣総理大臣賞)」など、国内外での受賞歴は50件を突破。日本の木造技術と洗練されたモダンデザインの融合は、アジアや欧州の教育関係者からも熱狂的な支持を集めています。