「西崎からは台湾が見える」という言説は、旅人の間で長年語り継がれるロマンの一つです。与那国島と台湾(宜蘭県・花蓮県周辺)の距離は約111kmしか離れておらず、これは東京〜熱海間とほぼ同等の近さです。国境を挟んだ隣国の存在を肌で感じられる距離感と言えます。
気象データや地元ガイドの観測記録によると、実際に肉眼で台湾の山影を確認できる確率は年間で約15日〜20日程度(全体の5%前後)と極めて希少です。地球の丸みによる地平線の影響があるものの、台湾東部には標高3,000mを超える中央山脈が連なっているため、大気中の水蒸気や霞が極端に少ない好条件が揃えば、水平線の上に濃い稜線がくっきりと浮かび上がります。
観測しやすいベストシーズンは、空気が乾燥して澄み渡る10月から2月にかけての晴天日、または夏の台風が通過した直後の湿度が下がった夕刻です。日没直前、夕日の逆光によって台湾の山並みが黒いシルエットとなって浮かび上がる瞬間は、まさに息をのむ美しさです。