文章の「肌触り」も真逆だ。『古事記』は、日本語の響きを漢字に当てはめた「変体漢文」で書かれている。神々の喜怒哀楽や、愛の歌、生々しい感情がそのまま伝わってくるのが特徴だ。読んでいると、古代人の息遣いが耳元で聞こえるような生々しさがある。
一方で『日本書紀』は、中国の歴史書(史記など)をお手本にした、極めてクールで客観的な漢文だ。感情を排し、いつ、誰が、何をしたかを淡々と記録する。エンタメとしての面白さは『古事記』に軍配が上がるが、歴史資料としての信頼性は『日本書紀』が圧倒的とされる理由がここにある。