この神社を語る上で欠かせないのが、室町時代の能楽師・世阿弥の作と伝えられる謡曲「善知鳥」の存在だ。ウトウという海鳥の親子の絆と、それを捕獲した猟師が殺生の罪によって地獄の苦しみを受けるという凄惨かつ美しい物語は、能の舞台を通じて全国へ広まった。
鳥の血を浴びた親鳥の落涙、そして霊となった猟師の苦悩。境内の池のほとりに立つと、風が揺らす木々の音がまるで謡曲の一節のように響く。かつての旅人や文人たちがこの地で感じた哀切と祈りの念が、時を超えて胸に迫ってくる。伝説は単なる昔話ではなく、生命に対する深い畏怖の念を今に伝えているのだ。