15世紀末、フィレンツェに狂信的な修道士サヴォナローラが現れる。彼は贅沢や美術品を「悪魔の誘惑」として激しく批判し、市民にそれらを燃やすよう迫った。これが歴史に名高い「虚栄の焼却炉」である。
多くの画家が自らの作品を炎に投じた。驚くべきことに、ボッティチェリ自身もサヴォナローラの思想に傾倒し、自らの手で多くの傑作を燃やしてしまったのだ。彼の精神は完全に崩壊しかけていた。
『ヴィーナスの誕生』は奇跡的にその炎を逃れ、メディチ家の別荘に隠されて生き延びた。もし発見されていれば、この美しき女神も灰になっていたはずだった。名画が辿った紙一重の運命そのものが、当時の宗教的狂気の恐ろしさを物語っている。