ドラマ『101回目のプロポーズ』において、視聴者を驚愕させ、文字通り日本中のお茶の間を釘付けにしたあのクライマックスが登場したのは、第6話「婚約破棄」(1991年8月5日放送)のエンディングです。全12話で構成された本作のちょうど折り返し地点にあたるこの回は、物語の潮目を大きく変える最重要エピソードとして位置づけられています。
浅野温子演じるヒロインのチェリスト・矢吹薫は、3年前に挙式当日の交通事故で最愛の婚約者・真壁芳之(長谷川初範)を亡くし、心の奥底に癒えない重度のトラウマを抱えていました。司法試験に落ち続け、容姿も冴えない万年係長の星野達郎(武田鉄矢)は、99回のお見合いに失敗した末の100回目で薫に出会い、泥臭いまでの誠意でアプローチを重ねます。しかし薫は、達郎の不器用な優しさに心を開きかけながらも、激しい葛藤と恐怖に苛まれます。「また人を愛して、その人が死んでしまったらどうするの? もうあんな苦しみには耐えられない」と涙を流し、愛することを拒絶する薫。その頑なな心の壁を打ち砕くために達郎が選んだ行動こそが、自らの生命を賭けたあの絶叫でした。
夜の路上、ヘッドライトを激しく点滅させながら突進してくる大型トラックの車道へ、達郎は突如として身を躍り込ませます。けたたましいスキール音とともにトラックが鼻先数十センチで急停車した瞬間、恐怖で顔を歪ませ、涙と鼻水を流しながら叫んだ「僕は死にません」のセリフ全文は以下の通りです。
「僕は死にません! 僕は死にません! あなたが好きだから、僕は死にません! 僕が、幸せにしますからぁ!」
この瞬間、CHAGE and ASKAが歌う主題歌「SAY YES」のストリングスが重なり、ドラマは劇的な幕切れを迎えます。脚本を手掛けた野島伸司は、論理的な説得や慰めの言葉では決して救えない「愛する者を失った人間の孤独」を、狂気とも呼べる捨て身の行動によって救済する構造を鮮烈に描き切りました。