体温計で測定しても36.5℃前後の平熱を示しているにもかかわらず、身体の奥に熱がこもる感覚に苛まれるケースでは、生体本来の「体温調節機能」と「感覚神経」にズレが生じています。臨床現場の医師や自律神経外来の専門家によると、こうした訴えの背景には大きく分けて3つの要因が存在します。
第1の要因は、身体に熱がこもる自律神経の機能低下です。人間は体温が上昇すると、自律神経の副交感神経が優位に働き、皮膚表面の末梢血管を拡張させて外気へ熱を逃がします。同時にエクリン汗腺から汗を分泌し、その気化熱で体温を下げます。ところが、慢性的な過労やプレッシャーによって交感神経が高ぶったままだと、末梢血管が不自然に収縮したままとなり、熱の出口が塞がれてしまいます。その結果、深部で産生された熱が内部に滞留し、息苦しい熱感として知覚されます。
第2に、40代以降の女性をはじめ男女問わず直面するホルモン動態の乱れ、すなわち体に熱がこもる更年期特有のホットフラッシュ(血管運動神経障害)です。女性ホルモンであるエストロゲンが急減すると、脳の視床下部にある体温調節中枢が過剰反応を起こします。外界の気温変化やわずかな感情の起伏に対し、脳が「体温が上がりすぎている」と誤認識して急激な血管拡張や発汗を命じるため、上半身ののぼせや激しい熱感に襲われるのです。
第3が、熱放散障害の代表格である「うつ熱」です。うつ熱の症状と対策を考える上で重要なのは、感染症による「発熱」との決定的な違いを把握することです。発熱は免疫反応として脳が体温の目標設定値(セットポイント)を引き上げる現象ですが、うつ熱はセットポイントが平熱のまま、環境熱や汗をかけない体温調節不全によって体内に熱が物理的に溜まる状態を指します。体温計では感知しにくい深部体温の上昇が続いており、早期に熱を逃がさなければ頭痛や吐き気へ直結します。