この複雑な人間関係の起点を理解するには、1990年代まで時計の針を戻す必要がある。音楽プロデューサーのショーン・コムズ(P・ディディ)は、まだ未成年だったアッシャーを自身の自宅に住まわせ、音楽ビジネスの洗礼を授けた。後にアッシャーが若き天才ジャスティン・ビーバーを発掘し、自らの師であるディディに紹介したのは有名な話だ。
しかし、アッシャー自身も過去のインタビューで、当時のコムズ宅での生活について「異常な光景を目にした」とほのめかしたことがある。音楽業界において、若き才能が力ある大物の庇護を受けるシステムは伝統的でもあった。だが、その裏に潜んでいたのは支配と服従の危うい関係性だったのかもしれない。光り輝くステージの陰で、未成年のアーティストたちがどのような環境に晒されていたのか、今改めて検証が求められている。