天体や金属の記号だったこれらを、生物の性別を表すために初めて導入したのが、18世紀スウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネだ。彼は1751年の著作『植物哲学』やその後の学術書において、植物や動物の雌雄を省スペースかつ直感的に表現する省略記号としてこのマークを採用した。
当時、学術論文の手書き作業や活版印刷において、文字数を削減することは印刷コストや誌面の可読性に直結する切実な問題だった。生物学の分野で分類学の基礎を築いたリンネの圧倒的な影響力により、これらのシンボルは瞬く間に世界中の科学者の間で標準記号として定着することとなった。夜空を見上げるための天文学の道具が、ミクロな生命の観察記録へと応用された歴史的瞬間である。