梨状筋は、お尻の表面を覆う大きな筋肉「大臀筋(だいでんきん)」のさらに奥深く、骨盤の底近くに位置する「深層外旋六筋」と呼ばれるインナーマッスル群の一つです。形状が西洋梨に似ていることからその名が付けられました。
解剖学的な位置関係を見ると、梨状筋は骨盤の中央にある仙骨の前面から始まり、股関節の外側にある大腿骨の大転子に向かって斜め下方に走行しています。股関節を外側にひねる(外旋)動作や、歩行時に骨盤と股関節を安定させる重要な役割を担っています。
最大の特徴は、下肢へと伸びる極太の神経幹である坐骨神経との密接な位置関係にあります。坐骨神経は、骨盤の出口(大坐骨孔)から出る際、梨状筋の下側(梨状筋下孔)をすり抜けるようにして太ももの裏へと下行します。
日本整形外科学会や臨床解剖学の報告によると、成人の約80〜85%は坐骨神経が梨状筋の下を通る標準的な構造をしていますが、残りの約15〜20%には坐骨神経が梨状筋の筋腹を貫通したり、二股に分かれて挟み込まれたりする解剖学的破異(バリエーション)が存在します。このような生まれつきの解剖学的特徴を持つ人は、筋肉のわずかな緊張でも神経圧迫を受けやすい傾向があります。
日常のデスクワークや車の運転で骨盤が後傾した状態で座り続けると、梨状筋は常に引き伸ばされながら押しつぶされる持続的な圧迫ストレスを受けます。これにより局所の血流不全(虚血)が生じ、筋肉が硬直して柔軟性を失うことで、隣接する坐骨神経を直接締め付け、お尻の深部痛や足先への放散痛を引き起こすのです。