インターネット上やSNSでは、この問題に関して今なお誤った情報や先入観が散見されます。報道の表層にとどまらない、押さえておくべき重要な視点は以下の通りです。
第一の誤解は、「世界中でトリチウムを海に流しているのは日本だけである」という言説です。実際には、中国の秦山原発や大亜湾原発、フランスのラ・アーグ再処理施設、韓国の月城原発など、世界各国の原子力施設から年間数十兆〜数百兆ベクレル規模のトリチウムが日常的に海洋・大気放出されています。福島第一原発の年間放出上限(22兆Bq未満)は、海外主要原発の通常排出量と同等かそれ以下の水準です。
第二の誤解は、「汚染水発言は単なる言葉尻の捕らえ損ねに過ぎない」という矮小化です。国際政治と通商交渉において、条約や外交文書、閣僚の公式発言は国家の意思表示とみなされます。不用意な一言が相手国による禁輸措置の格好の正当化口実として悪用されるリスクを孕んでいるため、単なる言葉のあやでは済まされない国際的実害が存在します。