研究室の発見を世界的な事業へと昇華させているのが、先進的なベンチャーキャピタルと先端技術の融合領域であるアグリテックだ。なかでも世界中の研究者の注目を集めたのが、オーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO)が主導したカギケノリ(赤色海藻)を用いた飼料添加物の開発である。この特定の海藻をわずか0.5%程度飼料に混ぜるだけで、牛のメタン排出量を劇的に削減できることが実証され、世界中に衝撃を与えた。
この分野の可能性にいち早く目をつけ、巨額の資金を投じたのが米マイクロソフト創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏だ。同氏が立ち上げた気候ファンドを通じて、海藻成分を化学的に模倣した化合物や、微生物の働きを制御する革新的な飼料添加物のスタートアップへ出資を加速させている。世界の食料需要を満たしながら環境負荷を下げるという難題に、IT巨頭から誕生したアグリテックの資金と知見が注入されているのだ。