1989年にスタートしたテレビ朝日の報道番組『ザ・スクープ』は、まさに鳥越俊太郎の真骨頂だった。自らキャスターでありながら現場へ飛び出し、桶川ストーカー殺人事件の警察捜査の不備を突くスクープなど、数々の社会的反響を巻き起こした。既存のニュース番組が触れようとしない「タブー」に切り込む姿勢は、当時の視聴者に強烈なインパクトを与えた。
しかし、その裏側には常に巨大な圧力と背中合わせの緊張が存在した。スポンサーへの配慮や政治的な圧力、社内での摩擦――。番組制作の最前線では、放送直前まで原稿の表現を巡る激しい議論が交わされていたという。権力に阿ねることなく、市民の視点から事実を掘り起こすこと。それこそが、彼が命を賭して守り抜こうとしたジャーナリズムのプライドだった。