150円のジュースを買うために5000円札を投入した場合、機械は4850円のつり銭を払い出さなければならない。千円札4枚と硬貨数枚という大量の硬貨・紙幣が一度に吐き出されれば、自販機内部のつり銭用金庫は一瞬で底をつく。一人の利用者のために「つり銭切れ」が発生し、後続の顧客が一切購入できなくなるリスクを回避することが、高額紙幣を排除する第一の理由だ。
しかし、理由はそれだけにとどまらない。内部機構の省スペース化も大きな要因だ。清涼飲料水を冷却・保温する断熱構造が筐体の大部分を占める自販機において、紙幣の保管・返却ユニットに割ける容積は限られている。千円札以外の紙幣を識別し、それをプールしてつり銭として還流させる機構を載せるには、冷却スペースを削るか、本体を巨大化させるしかない。
さらに最新の識別機には、高度なつり銭切れ防止アルゴリズムが組み込まれている。投入された紙幣の偽造チェックだけでなく、内部の100円玉や千円札の残数をミリ秒単位で計算。一定の閾値を下回った段階で購入を制限し、現金の詰まりや払い出しエラーを未然に防ぐ仕組みだ。ハードウェアの物理的制約と、運用の確実性を追求した結果が「5000円札非対応」という選択だった。