2020年代に入り、牧田愛の表現手法は劇的な拡張を見せている。その中核にあるのが生成AI(Generative AI)の導入である。
彼女はAIを単なる省力化ツールとして使うのではない。デジタル空間上でアルゴリズムによって生成された「実体を持たない構造体」をあえて一度データとして取り出し、それを再び絵の具やキャンバス、立体彫刻といった物質へと泥臭く転換する手法をとる。
2024年にPARCEL(東京)で開催された個展「人工的神々」や、2025年にロサンゼルスのBaert Galleryで展開された「Metabolizing Machine(代謝する機械)」は、この試みを象徴する展示であった。AIが弾き出した曖昧な3Dグラフィックの影や曲線を、人間である牧田が自身の身体性を介して高精細な物質へとリアルタイムで「代謝」させていく。
「デジタル領域で作られた幻影に、油彩の質感や物質の質量を与えること。それは、実体と仮想の境界が溶解した現代社会における『新時代の神話』を作り出す作業に他ならない。」