投手が放つボールの中で、チェンジアップほど人間工学的・心理学的なバグを巧みに突いた球種はない。打者は投手の肩の回転、肘のしなり、リリース時の腕の振りのスピードから球速を瞬時に予測する。しかし、手元から離れたボールは直球より15キロから20キロ遅く、しかも打者の手元で沈み込む。
このギャップこそが脳の処理をフリーズさせる。直球と同じ見極めラインで踏み込んだ強打者が、完全に態勢を崩されて泳がされる光景は日常茶飯事だ。リリース直前まで直球の握りと区別がつかず、指先の摩擦と握りの深さだけで減速を生み出す技術は、長年にわたり職人技と評されてきた。