ボビンが綺麗に巻き上がった後、最後に待ち構えているのが「ミシン本体へのセット」です。ここで向きを間違えると、完璧に巻いた下糸も一切の機能を果たしません。
現在主流の水平全回転釜(ボビンを上から落とし込むタイプ)における鉄則は、ボビンを持ったときに糸が左側へ垂れ下がる「Pの字」の向きでセットすることです。ボビンを上から見て、反時計回りに糸が引き出される状態で内釜へ落とし込みます。その後、内釜の手前にあるツメ(スリット)に糸を掛け、左奥のガイド溝へ向かってしっかりと滑り込ませます。このツメに糸を通過させることで下糸に適正なブレーキ(下糸テンション)がかかります。ツメを通さずにそのまま引き出すと、上糸調子をいくら強めても裏側の縫い目がループだらけになってしまいます。
一方、伝統的な垂直半回転釜・垂直全回転釜(金属製ボビンケースを使うタイプ)では、ボビンケースを左手に持ち、右手でボビンを「糸が時計回り(または反時計回り、ケース構造による)」に引き出せる向きで挿入します。ケース側面の細いスリットに糸を通し、板バネの下をくぐらせて小さな穴から糸を出します。ボビンケースから垂らした糸を手で持った際、本体が自重でゆっくり数センチ下がって止まる程度(ヨーヨーテストと呼ばれる状態)が理想的な下糸調子です。
上下の糸調子のバランスは、「上糸の模様が布の裏側に少し見え、下糸の結び目が布の厚みのちょうど中央に隠れる状態」が完璧な基準です。縫い目が乱れた際、すぐにミシン本体の糸調子ダイヤルをいじる人がいますが、まずは「ボビンの巻き直し」と「下糸のセット向きの再確認」を行うことがトラブル解決の最短ルートです。