伊吹吾郎が国民的スターとしての地位を揺るぎないものにした背景には、若手時代に出会った妻との堅い結束があった。駆け出しの頃から彼を深く理解し、過酷な撮影現場へ向かう背中を押し続けたのが彼女である。一般女性として静かに家庭を守り抜く姿勢は、まさに昭和の映画人・俳優の妻としての気品に満ちていた。
何より彼を語る上で欠かせないのが、TBSテレビの看板長寿番組『水戸黄門』における渥美格之進(格さん)役だ。17年という長きにわたり印籠を掲げ続けた栄光の裏には、年間のおよそ大半を京都に滞在するという過酷な単身生活があった。長期間家を空ける夫に代わり、東京の留守を完璧に守ったのが妻だった。弱音を一切吐かず、毎日の健康管理に細心の注意を払い、夫が撮影に100パーセント没頭できる環境を整え切った。夫婦喧嘩すら芸の肥やしに変えるような、阿吽の呼吸と深い信頼関係がそこには息づいている。