日本屈指の名城として知られる名古屋城では、戦災で焼失した天守閣を復元する歴史的プロジェクトが進められてきた。その中心となる名古屋城天守閣木造復元事業は、実測図や豊富な古写真といった貴重な史料に基づき、伝統工法を再現して江戸時代の姿を忠実に復元することを目指している。
しかし、設計段階から激しい論争の種となったのが、天守閣内部へのエレベーター設置の是非だ。昭和期に建てられたコンクリート製の旧天守閣にはエレベーターが存在していたが、忠実な史跡・木造建築復元を目指す側は、木造の柱や梁を傷つけない意匠維持を主張した。これに対し、高齢者や障害者の移動権利を守るべきだとする立場からは激しい反発が起き、プロジェクト全体の進捗を左右する大きな課題へと発展した。