寺号にある「密厳」という言葉は、真言密教における最高仏である大日如来が住まう清浄な覚りの世界「密厳浄土」を意味しています。平安時代から中世にかけて、真言宗の高僧たちが教えの拠点を築くにあたり、この聖なる世界を現世に具現化すべく名付けたのが密厳寺の始まりです。
日本各地に点在する密厳寺の中でも、とりわけ名高いのが佐賀県嬉野市に位置する密厳寺や徳島県徳島市の密厳寺です。嬉野の密厳寺は古くから温泉街の守護や地域住民の心の拠り所として親しまれ、弘法大師ゆかりの伝承を今に受け継いでいます。一方、阿波の地に佇む徳島の密厳寺も、四国遍路や地域信仰と深く結びつきながら、幾多の動乱や火災を乗り越えて法灯を守り抜いてきました。
時代が移り変わっても、密厳寺が放つ厳かな品格は色褪せることがありません。教えの根幹に「即身成仏」と「現世救済」を掲げる真言宗の寺院だからこそ、いつの時代も苦難に直面する人々の救いとなってきた歴史的背景が存在します。