「走れメロスのメロスは本当に速かったのか?」という疑問に対し、テキストに記された客観的データをもとに物理計算を試みると、実に興味深い数字が弾き出される。物語の舞台となるシラクスの街までの距離はおよそ10里、現代の単位にして約39キロメートル。往路において、彼は早朝に出発して初秋の陽が落ちる前に到着している。
ところが、問題は重大な使命を帯びた帰り道だ。妹の結婚式を終え、処刑台で待つ親友セリヌンティウスの元へ戻る復路で、彼のペースは著しく落ちる。午前中に村を出発し、川の増水や野賊との格闘、疲労による停滞を経て、日没直前にギリギリで到着した。道中の試練や休息時間を差し引いても、全体の移動時間を走行距離で割った平均時速は、わずか時速3.9〜5キロメートル前後。これは現代の人間が少し早足で散歩するスピードと変わらない。