日本国憲法が保障する「営業の自由(職業選択の自由)」や「財産権」との兼ね合いにおいて、特措法改正に伴う過料と罰則の導入は法学上も激しい議論を巻き起こしました。行政法における私権制限の要件比較を行うと、両者の境界線は非常に精緻に設計されています。
事業者が最も注意を払うべきは、「要請」から「命令」、そして「過料」へと進む法的手続きのプロセスです。
まん延防止等重点措置において知事が出せるのは、あくまで「営業時間の短縮」などの措置を講じることの要請・命令(第31条の6第1項・第3項)です。法律上、施設そのものの休業要請や命令を出す権限は含まれていません。一方、緊急事態宣言下(第45条第2項・第3項)では、時短にとどまらず、カラオケ店、劇場、大規模商業施設、あるいは酒類を提供する飲食店に対して「休業」そのものを要請・命令することが認められます。
行政罰としての過料についても、その責任の重さに応じて明確な格差がつけられています。
- まん延防止等重点措置の命令違反:過料の基準は20万円以下(特措法第80条)。
- 緊急事態宣言の命令違反:過料の基準は30万円以下(特措法第79条)。
行政が正当な理由なく要請に応じない事業者に対して命令を発出し、さらに過料を科すためには、立入検査や事前の弁明の機会の付与など、厳格な行政手続法上のステップを踏む必要があります。科されるのは刑事罰(罰金や懲役)ではなく秩序罰としての過料ですが、裁判所による非訟事件手続を経て決定されるため、事業者の社会的信用に及ぼす影響は決して小さくありません。