利用客に快適な時間を提供するため、温泉旅館や温浴施設は日々、見えないところで徹底した害虫駆除と衛生管理の戦いを繰り広げています。
旅館業法および公衆浴場法に基づき、施設側は厳格な衛生管理基準を課されています。循環ろ過方式の浴槽では毎日完全換水・清掃を行い、遊離残留塩素濃度の維持が義務付けられています。また、チョウバエなどの発生源となる配管内部や集水ピット、オーバーフロー溝には定期的な高圧スチーム洗浄や発泡性除菌剤の投入が実施され、幼虫の定着を未然に遮断しています。
露天風呂エリアにおける具体的な防虫対策としては以下のような高度な設備投資が行われています。
・防虫用イエローLED照明の導入
昆虫が感知しやすい紫外線領域をカットした特殊な波長の照明を採用し、浴槽エリアへの飛来を大幅に低減させています。
・誘引式捕虫器の戦略的配置
利用者の目につかない風上や敷地境界に紫外線誘引捕虫器を設置し、お湯のあるエリアへ虫が到達する前に捕獲・トラップする動線設計が取られています。
ただし、自然と一体化した開放的な露天風呂において、化学薬品を浴槽水に大量投入することは泉質を損なうだけでなく人体にも有害です。そのため、多くの名旅館では「すくい網(タモ網)」を湯船の脇に常備し、利用客にも協力を仰ぎながら自然と調和した形で清潔さを保つ運用を行っています。